1冊の本を作りあげるルリユール

ルリユールは、ヨーロッパを中心とする地域に中世から伝わる手作業による製本技術です。中でもフランスは、ルネサンスの時代、時の国王自身がコレクターであったこともあり、豪華なルリユール文化が花開きました。時代を経て脈々と受け継がれたルリユールは、19世紀には富裕層の市民にまで裾野が広がり、社会の中に根付いていきました。
    ルリユールの作業は、内容も紙も大きさも1冊ごとに違う本を、それぞれの状態に相応しい方法で製本します。大まかな工程としては、折り帖を折り直し、麻糸、麻紐を用いて1折りごとにかがり合わせ、表紙ボードに綴じ付けて本の中身を作ります。そして革のカバーでくるみ、表紙に金箔押しなどの意匠を施すことで1冊の本を完成させます。印刷された本の特性を活かし、好みに応じた素材と製本方法を選択することができます。

ルリユールの歴史的背景

フランスでは、現代でも「仮綴じ(brochure)」の状態で売られている本があります。仮綴じとは、折り畳まれた折り丁の束を糸で1、2カ所かがり合わせ、薄い表紙が折り丁の背に軽く糊付けされたものを言います。折丁は刷られた紙がそのまま折り畳まれた状態で綴じられているので、天小口や前小口はしばしば袋状でカットされていないことがあります。近年は見受けることが少なくなったとはいえ、少部数の詩集、小説などでは今でもこうした形で販売されていることがあります。仮綴じの本は、将来製本・装幀される(Relier)ことを想定した仮の(一時的な)製本であって、かつてはそれを製本工房に持っていって製本してもらう必要がありました。
 糸かがりさえされていない、つまり折り畳まれたままの状態の「未綴じ」の本もあります。これらはたいていの場合、8折り、4折りサイズで、良質の厚手の紙に活版印刷され、限定番号付きで、有名画家のオリジナル版画が入っている豪華版として作られました。まさに1冊ごとに手製本で仕上げられるために未完成の状態に止め置かれている本だと言えます。フランスでは歴史的に、出版、印刷と製本は別の職分であり、本は未綴じや仮綴じのままヨーロッパ各地に運ばれ、販売され、購入されたその地で製本業者の手にわたり製本されました。現在でもこのような書物形態が存在してのはこうした習慣と愛書蒐集の伝統による所が大きいようです。

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